獣害対策の「効力」を落とさない
点検・維持管理の鉄則マニュアル
どんなに高価な防護柵も、設置したその日から劣化と動物の挑戦が始まります。
「以前は効いていたのに…」という失敗の多くは、機能の低下を見逃した管理の形骸化が原因です。
最小限の手間で最大限の効果を持続させる、実務的な点検ポイントを整理しました。
なぜ対策は「突然」突破されるのか The Silent Failure
動物が急に学習したわけではありません。人間が気づかないほどの「わずかな隙」を、彼らは24時間かけて探し出しています。
1. 絶縁不良(電気柵)
伸びた雑草や倒木が線に触れ、電圧が地面へ逃げてしまう漏電。動物にとって「痛くない柵」へ変化します。
2. 地面の変化(フェンス)
大雨による土砂流出や、小動物が掘った穴。わずか10cmの隙間が、大型獣の侵入口になります。
3. 慣れと学習
管理不備で一度でも侵入を許すと、動物はそこを弱点と認識し、執拗に攻撃を繰り返すようになります。
4. ゲートの形骸化
「少しの間だから」という閉め忘れ。心理的な油断が、数万円の投資を無に帰します。
実務的な点検スケジュール
全部を毎日は続きません。リスクの高い場所に絞った効率的な点検を推奨します。
週1回の「重点パトロール」
ここだけは必ず確認
- 角(コーナー)の緩み:最も力がかかる場所の支柱が傾いていないか
- 裾(下部)の隙間:鼻を突っ込んで持ち上げられた形跡がないか
- 獣道の出現:柵の外側に新しい足跡や執着した跡がないか
季節変化に合わせた「予防保守」
自然環境の変化は、物理的な破壊を引き起こす最大要因です。季節ごとに壊れやすい箇所を先回りで潰します。
・夏(台風期):支柱の傾き、倒木、土壌浸食。強風・大雨の後は臨時点検。
・秋(収穫期):動物の執着心がピーク。誘引物(残渣)を柵の近くに置かない。
・冬(積雪期):積雪で柵の有効高さが低下。沈み込み・たわみの点検。
電気柵:目に見えない「電圧」を管理する
電気柵は「線があること」と「電気が流れていること」は別物です。定期的に電圧測定を行いましょう。
管理のコツ:
テスター(電圧計)を必ず使用してください。末端で4,000V以上を維持できているかが一つの目安です。
▶ 詳細は 電気柵の安全基準と電圧管理 へ
フェンス:物理的破壊を防ぐ「裾」と「ゲート」
フェンスの強度は、網の太さよりも固定力に依存します。特に裾が動く状態は危険です。
管理のコツ:
アンカーピンの浮き・抜けをチェックしてください。イノシシは下から持ち上げる力が強く、裾が動く状態は突破の起点になります。
▶ 詳細は フェンスの裾固定と補強方法 へ
5分で完了:現場点検チェックリスト
- ゲート(出入口)は地面に密着して閉じているか
- ネットの裾に握り拳が入るほどの隙間はないか
- 電気柵の線に草や小枝が触れていないか(漏電の兆候がないか)
- 支柱がグラついたり、ワイヤーが極端に弛んでいないか
- 柵のすぐ外側に、踏み台になるような石や倒木がないか

