シカ対策の基本|跳躍を防ぐ高さと助走を断つ防護設計

1.5mは「助走なし」で跳び越されます

シカ対策の完全版:
跳躍を封じ、潜り込みを断つ

シカはイノシシと違い、「立体的な侵入」を得意とする動物です。
2メートル近い跳躍力だけでなく、わずかな隙間を見つける視力、そして「ネットの下を潜り抜ける」柔軟性も持ち合わせています。
「高ければ良い」だけではない、地形と習性を計算に入れた防護設計の急所を解説します。

シカの身体能力:なぜ1.5mでは足りないのか

多くの現場で「1.2〜1.5m」の柵が突破されています。それは、シカが持つ「地形を利用する賢さ」を見落としているからです。

垂直跳びと助走跳び

静止状態から1.5m、助走があれば2m近くを跳びます。柵の高さは最低でも「1.8m〜2.0m」が標準となります。

「下からの」潜り込み

実はジャンプより多いのが「潜り込み」。柔軟な体を使い、ネットの裾を鼻先で持ち上げて15cmの隙間から侵入します。

斜面の罠(高低差)

山側から田畑へ降りる場所では、シカは「上から」跳びます。斜面では2mのフェンスも、シカ視点では1mの高さしかありません。

👉 重要: シカ対策は「高さ」だけでなく、「外側に助走スペースを作らせない」「下を固定する」の3点揃って初めて完成します。

結論:シカ対策はこの3ルートで決まる

地形や管理の手間に合わせて最適な防護方法を選びましょう。

ルートA:電気柵(5段以上)

「心理的な壁」で止めます。シカの鼻先に当たるよう、高さを変えて5〜7段張るのが基本。視認性を高めるために「白ポリ線」や「リボン」が必須です。

ルートB:高強度フェンス

「物理的な壁」で止めます。1.8m以上のワイヤーメッシュやアニマルフェンスを使用。網目が大きいと足をかけて登るため、目合いの選定も重要です。

ルートC:ハイブリッド併用

物理フェンスの上に1〜2段の電気柵を追加。跳躍を試みようとフェンスに近づいたシカの鼻先に電気ショックを与え、学習させます。最も突破率が低い方法です。

電気柵とフェンス、どちらを選ぶべきか?

比較項目 電気柵(推奨:5段〜) フェンス(推奨:1.8m〜)
メリット 資材が軽く、設置・撤去が容易。コストが安い。 一度設置すれば10年以上もつ。管理が楽。
デメリット 草刈りや電圧管理が必須。放置すると無効化する。 初期費用が高い。重いため施工に人手が必要。
シカ特有の注意点 跳躍を抑えるため「高さ」と「視覚的アピール」が必要。 「下」を持ち上げられないようアンカー固定が必須。
向いている現場 広大な農地、季節限定で守りたい場所。 住宅地周辺、絶対に侵入させたくない果樹園。

シカとイノシシ、対策の「急所」はここが違う

同じ獣害でも、シカとイノシシでは侵入の仕方が違います。 だから「イノシシで効いた対策」をそのまま流用すると、シカだけ突破されるケースがよく起きます。

比較ポイント シカ(跳躍・視覚) イノシシ(鼻先・掘り)
侵入の主パターン 跳び越える/潜り込む(ネット持ち上げ) 下を掘る/持ち上げる(鼻先パワー)
フェンス設計の急所 高さ(目安1.8m〜2.0m)+助走を奪う 裾固定(L字・アンカー)で下を塞ぐ
電気柵の基本 5段以上+視認性(白ポリ線・リボン) 低段(鼻先狙い)+漏電対策が最優先
よくある失敗 1.5mで安心/外側が平坦で助走される 草で漏電/下の隙間が10〜15cm空く
誤解しやすいポイント:
「高ささえあればOK」ではありません。シカは助走があれば跳び、ネットのたるみがあれば潜ります。
一方イノシシは、ほぼ確実に下(裾)の弱点を狙います。

▶ 個別の対策はこちら: イノシシ対策(下を掘る・鼻先対策) / 電気柵(段数・漏電・運用) / フェンス(裾固定・施工の急所)

▶ 関連ガイド: 電気柵の正しい段数と張り方 / フェンスの裾固定のコツ

なぜ突破された?よくある失敗パターン

① 「視認性」の欠如

シカは夜間、細いワイヤーが見えていません。見えないまま突進し、結果として柵を破壊して侵入します。
改善:青や白のテープ、リボンを括り付け、「ここに壁がある」ことをハッキリ教える必要があります。

② 助走エリアを平らに放置している

柵の外側に2〜3メートルの平坦なスペースがあると、シカにとっては「絶好のジャンプ台」になります。
改善:柵の外側にわざと障害物を置いたり、あえて斜面ギリギリに立てることで、踏み切るための「足場」を奪います。

③ ネットの「弛み(たるみ)」

ネットの下部が弛んでいると、シカは鼻先で簡単に持ち上げます。一度潜れることを覚えると、何度でもそこから入ります。
改善:裾を20cmほど外側に折り込み、ピンで地面に固定(L字固定)してください。

シカ対策のよくある質問

Q. 市販の1.2mネットを2段重ねて2.4mにすれば大丈夫?

高さは十分ですが、接合部が弱いとそこを突き破られます。また、支柱がその高さに耐えられる強度(太さ・埋め込み深さ)を持っていないと、風やシカの接触で倒れるリスクがあります。必ず補強支柱を入れてください。

Q. イノシシ対策の柵(高さ1m)をシカ用に流用できる?

そのままでは不可能です。イノシシ用の柵の上に、シカ用のワイヤーやネットを2〜3段追加して「かさ上げ」を行う必要があります。この際、シカは上から「中を覗き込む」ため、上の段の強度も重要です。

Q. 冬場だけ対策を休んでもいいですか?

おすすめしません。シカは冬場、餌を求めてより積極的に行動します。雪が積もると「地面が高くなる」ため、夏場は跳び越せなかった柵も簡単に越えられてしまいます。積雪地では雪に強い「ネット式」か「冬用設計」が必要です。

Q. シカは夜でもフェンスや電気柵を認識できますか?

十分に認識できていないケースが多いです。特に細いワイヤーや黒色のネットは、夜間や薄暗い環境では視認性が著しく低下します。 その結果、シカは柵の存在に気づかないまま突進し、破壊・突破が起きやすくなります。

対策:
・電気柵では「白ポリ線」「視認リボン」を併用する
・フェンスでは外側に反射テープや明るい色の結束材を一定間隔で付ける
・夜間照明や月明かりを遮らない配置にする

シカ対策では「高さ」だけでなく、夜間に“見える壁”を作ることが突破率を下げる決定打になります。

まとめ:シカには「視覚・物理・心理」の三重奏

シカ対策を成功させるには、単にフェンスを高くするだけでなく、彼らの視覚に訴え、足場を奪い、潜り込む隙間を消すことが不可欠です。
まずは、あなたの現場が「山側(斜面)」か「平地」かを確認し、最適なルート選びから始めてください。

次に読むと理解が一気に深まります

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維持管理

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